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愛しき書物達をご紹介
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書 名〈女らしさ〉の文化史 性・モード・風俗
著 者 小倉孝誠
出版社 中央公論新社
出版年 2006年

ミスコンテストという催事がある。世界の美女を集めて世界一を決めるというものだが、なんとも不思議な催事だといつも思う。そもそも美しさとは何であるかと考えると、誠にあやふやなものである。時代や場所によって美の基準は大きく変る。同じように、美に限らずさまざまな人間のありようは時代や場所によって大きく異なる。男らしさや女らしさだって、実は不変のものではない。どこぞの密林の奥には、女が戦士となって戦い、男が子育てする人々もいるそうだし、今は子育てになかなか関われない日本男性であるが、明治初期の日本を訪れた外国人旅行者は、日本男性が非常によく子供の面倒を見ていると驚嘆して書き残しているほどだったのだ。ある時代に生きる人間にとって、正に今の状況が不変のものに感じてしまうのは仕方ないことなのだが、違う時代の人々が、どのような規範の中で生きていたのか、その規範を下支えしていた思想とはなんなのかを知ることは自分自身のあり方を考える上で、非常に有益なのではないかと思う。

 この本は、19世紀から20世紀初頭のさまざまな著作物、絵画などから、この時代に「女性」がその身体性を含め、どのようにとらえられていたかを丁寧に描きだしている。

現代女性は、男性を「見ること」を躊躇しないし、男性について、さまざまに論じることを厭わない。また、そのことを非難されることも大分少なくなってきた。それはまだほんの最近のできごとなのだと思い知らされる。この世に男性と女性がいる限り、互いにそれぞれの思惑をもってまなざしていくのだろう。100年後、私達の生きる時代の男女のあり方はどのように後世の人々にとらえられるのか?考えさせられる一冊である。


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書 名 結婚の条件
著 者 小倉千加子
出版社 朝日新聞社
出版年 2003年

 現代は「結婚難」の時代だそうだ。確かに、平均初婚年齢は年々遅くなっているし、生涯未婚率は上がり、少子化は止まらない。いったいこれらの現象の裏に、どんな心理が潜んでいるのか、歯切れのよい文章で次々と解き明かされていく。完全にずれてしまっている男女の結婚に対する思惑と、的外れの国の施策。読み出したら面白くて夜中の2時半まで読みふけってしまった。出版されたのは4年前だから、この本に書かれた状況から結婚を取り巻く状況は更に変化していることは間違いない。
 「馬には乗ってみよ、人には添ってみろ」ということわざがある。やってみなければわからない事もある。条件にこだわるあまり、チャンスを逃す人も多いのではないだろうか。
 筆者は特に解決策を提示するわけではない。考える糸口を示しているだけだ。おそらく、あまりに複雑すぎて、単純に割り切れないからだろう。結婚は極めて個人的な感情の問題であると同時に、社会的な問題でもある。あーしろこーしろといったところで、決定的な解決策になるわけではない。
 誰かが言っていた。「結婚したい人は必ず結婚する」と。そういう人間は「結婚」を成立させる為に妥協するからだ。妥協というのは聞こえが悪いが、身の丈に合ったところで折り合いをつけると言い換えてもいい。お互いに歩み寄れる人間同士なら、なんとかなると思う。「割れ鍋に綴じ蓋」ということわざもある。現状、結婚は出来たらしたいといっているうちは、なかなか出来ないものになった。
 いろいろ面白い視点で「結婚」が分析されているが、特に面白かったのは、恋愛とフェティッシュの項。
 私自身はすでに結婚してしまっているが、子供達はどのような選択をするのか?両親の奇妙な結婚生活を見ている割には、結婚願望が強いように思う。反面教師ということかも知れない。
書 名 増補フランス文学案内
筆 者 渡辺一夫 鈴木力衛
出版社 岩波書店 岩波文庫別冊1
発行年 1961年

です・ます調の非常に平易な文章で書かれていて読みやすいです。年代を追ってフランス文学の流れがわかりやすく解説されています。お目当ては当然18世紀の部分だったのですが、ちゃんとはじめから読みました。もちろん、どんな一時点においても、過去からの様々な積み重ねの上に成り立つものだからです。フランス人の二面性ということについての文学面からの考察があり、とても興味を惹かれました。
書 名 武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新
著 者 磯田道史
出版社 新潮社 新潮新書005
発行年 2003年

私は、人と人、人と物がめぐりあうということは、何か運命めいたものがあると思っている。著者と「金沢藩士猪山家文書」との出会いは、まさに運命の出会いとしか言えない。偶然送られてきた古文書販売目録の中に著者は大変な宝を発見する。著者がこれを宝だと直感できたのは、この古文書めぐり合うべき人間だったからに違いない。タイムカプセルと言うにはあまりに粗末なみかん箱に入った古文書を、著者は情熱を持って読み解き、天保年間から明治半ばまでの37年間に渡る「猪山家」の生々しい生活を私たちの前に提示してくれた。
長い時を隔てているにもかかわらず、家族の抱える問題というのは大して変わっていないのだという妙な親近感と、幕末という激動の時代を生きた家族の必死な姿に励まされる。
書 名 文章の書き方 岩波新書 新赤版328
著 者 辰濃和男
出版社 岩波書店
発行年 1994年

自問してみる。

文章を何のために書くのか?それは伝える為である。
では、何を伝えるか?どのように書いたら伝わるのか?
自分にとって伝えたいものとはなんなのか?

文章を書くということは、自分を晒すようなものである。
だから、文章を読むのは面白いし、書くのは面白い。

文章の書き方と題されているが、ものの見方、考え方、表現の方法について広く考えさせてくれる一冊。単なるハウトゥ本ではない。
著者の辰濃和男氏は朝日新聞の『天声人語』の元筆者だそうだ。
内容もさることながら、ページ上に並んだ活字の濃淡のバランスが美しい。漢字とひらがなの割合が絶妙な所為だろうか?



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