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愛しき書物達をご紹介
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書 名〈女らしさ〉の文化史 性・モード・風俗
著 者 小倉孝誠
出版社 中央公論新社
出版年 2006年

ミスコンテストという催事がある。世界の美女を集めて世界一を決めるというものだが、なんとも不思議な催事だといつも思う。そもそも美しさとは何であるかと考えると、誠にあやふやなものである。時代や場所によって美の基準は大きく変る。同じように、美に限らずさまざまな人間のありようは時代や場所によって大きく異なる。男らしさや女らしさだって、実は不変のものではない。どこぞの密林の奥には、女が戦士となって戦い、男が子育てする人々もいるそうだし、今は子育てになかなか関われない日本男性であるが、明治初期の日本を訪れた外国人旅行者は、日本男性が非常によく子供の面倒を見ていると驚嘆して書き残しているほどだったのだ。ある時代に生きる人間にとって、正に今の状況が不変のものに感じてしまうのは仕方ないことなのだが、違う時代の人々が、どのような規範の中で生きていたのか、その規範を下支えしていた思想とはなんなのかを知ることは自分自身のあり方を考える上で、非常に有益なのではないかと思う。

 この本は、19世紀から20世紀初頭のさまざまな著作物、絵画などから、この時代に「女性」がその身体性を含め、どのようにとらえられていたかを丁寧に描きだしている。

現代女性は、男性を「見ること」を躊躇しないし、男性について、さまざまに論じることを厭わない。また、そのことを非難されることも大分少なくなってきた。それはまだほんの最近のできごとなのだと思い知らされる。この世に男性と女性がいる限り、互いにそれぞれの思惑をもってまなざしていくのだろう。100年後、私達の生きる時代の男女のあり方はどのように後世の人々にとらえられるのか?考えさせられる一冊である。


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書 名 絵解き 中世のヨーロッパ
著 者 フランソワ・イシェ 訳蔵持不三也
出版社 原書房
出版年 2003年

ヨーロッパ中世の彩色写本が好きだ。羊皮紙に一枚一枚丁寧に描かれた絵や手書きの文字。古の人々の姿をとじこめた美しい本は子供の頃からの憧れだった。本物の彩色写本を見ることが出来たのは大人になってからだが、こんな風に美しい本を持てたらどんなにか素敵だろうと見るたびに思う。書類のペーパーレス化が進もうと、電子端末で小説が読める時代になろうと、「本」という情報媒体はなくならないような気がする。扉を開けるときのわくわく感。初めてページをめくる時にたつシュッっというかすかな音、インクのにおい。本そのものの存在が既に魅力的だから。

本屋で見つけて衝動買いしてしまった一冊。200点にも昇る図版が掲載され、絵を見ながらめくるだけでも楽しい。写本に描かれた絵をその時代を表わすものとして丁寧に読み解いていく著者の視点に導かれ、中世に生きた人々の生活を知ることが出来る、楽しい本だ。

書 名 大江戸死体考 人斬り浅右衛門の時代
著 者 氏家幹人
出版社 平凡社
出版年 1999年

現代日本社会は蛍光灯で照らされた部屋のようだと思う。隅々まで青白い清潔な光に満たされている。影のない世界とでも言おうか・・・。私が小さな子供の頃、部屋の電気は白熱灯だった。オレンジがかった光は部屋の隅を照らしきれずに、薄暗い闇の存在を感じさせた。家の前の路地は舗装されておらず、雨が降るとぬかるんだ。高度成長期にやっとさしかかろうという時代、日本はまだ貧しかった。本当に乞食がいた。ホームレスではなく乞食。この違いをなんと説明したらいいのだろう。神社の祭礼時には怪しげな見世物小屋がたった。今の娯楽的なお化け屋敷とは違うおどろおどろしい湿った闇を、入り口にかけられた幕の向こうに感じた。お稲荷さんが祀られた神社の杜、弔いの飾りがたてられた墓場の土饅頭。生活のすぐ近くに闇がまだかろうじて寄り添っていた。
筆者は江戸時代の「死体」をめぐるあれこれを軽妙な語り口で書き綴っていく。扱うものがものだけに、これを、大真面目に書かれたら、数ページで読みたくなくなるだろう。だが、筆者は上手に最期まで読ませてくれる。このところ読んだ本の筆者が共通して言っていることがある。「昔の感覚や価値観を現代の感覚で捉えるのは間違っている」ということである。確かにそうだと思う。現代のこの感覚を古代に当てはめられるはずがない。現代においてさえ、10年違うだけで全く違う感覚が出来上がっているのだ。携帯電話がなかった時代の感覚と、携帯なしでの生活なんて!という今の感覚と同じとは思わない。それでもなお、人間というものに共通する何かを感じ取ることが出来るのが本当に不思議だ。
時代劇や時代小説好きな人なら、人斬り浅右衛門(山田浅右衛門)の名を聞いた事があるだろう。代々受け継がれたその名と職務の実態はどういうものだったのかを中心に書かれた本に、人間の不可解さと面白さを感じた。フランスの死刑執行人サンソンについた本を以前このブログにも紹介したが、この2者を比較するとそのあまりの類似に驚く。もし、興味をお持ちになったのなら、両方の本を読まれることをお勧めしたい。
作者はエピローグの副題に「もっと闇を!」とつけている。闇があるからこそ光が光として認識できるのだ。光しかない世界も、闇しかない世界も本当の世界ではないのかも知れない。光が当たり、影が生まれることで、
そこに確かに存在するものとして認識できる世界。時には積極的に闇を求めるのも悪くないと思った一冊。
書 名 結婚の条件
著 者 小倉千加子
出版社 朝日新聞社
出版年 2003年

 現代は「結婚難」の時代だそうだ。確かに、平均初婚年齢は年々遅くなっているし、生涯未婚率は上がり、少子化は止まらない。いったいこれらの現象の裏に、どんな心理が潜んでいるのか、歯切れのよい文章で次々と解き明かされていく。完全にずれてしまっている男女の結婚に対する思惑と、的外れの国の施策。読み出したら面白くて夜中の2時半まで読みふけってしまった。出版されたのは4年前だから、この本に書かれた状況から結婚を取り巻く状況は更に変化していることは間違いない。
 「馬には乗ってみよ、人には添ってみろ」ということわざがある。やってみなければわからない事もある。条件にこだわるあまり、チャンスを逃す人も多いのではないだろうか。
 筆者は特に解決策を提示するわけではない。考える糸口を示しているだけだ。おそらく、あまりに複雑すぎて、単純に割り切れないからだろう。結婚は極めて個人的な感情の問題であると同時に、社会的な問題でもある。あーしろこーしろといったところで、決定的な解決策になるわけではない。
 誰かが言っていた。「結婚したい人は必ず結婚する」と。そういう人間は「結婚」を成立させる為に妥協するからだ。妥協というのは聞こえが悪いが、身の丈に合ったところで折り合いをつけると言い換えてもいい。お互いに歩み寄れる人間同士なら、なんとかなると思う。「割れ鍋に綴じ蓋」ということわざもある。現状、結婚は出来たらしたいといっているうちは、なかなか出来ないものになった。
 いろいろ面白い視点で「結婚」が分析されているが、特に面白かったのは、恋愛とフェティッシュの項。
 私自身はすでに結婚してしまっているが、子供達はどのような選択をするのか?両親の奇妙な結婚生活を見ている割には、結婚願望が強いように思う。反面教師ということかも知れない。
書 名 パリでひとりぼっち
著 者 鹿島茂
出版社 講談社
出版年 2006年

19世紀フランスに関する多くの著作を持っている鹿島茂氏の青春小説。
日本からの送金が途絶え、「アンリ四世校」を放校になってしまったコマキ少年がパリの街で9日間自力で生きるため奮闘する。20世紀初頭のパリのさまざまな表情を織り交ぜながら、フランス人の人生哲学や社会の仕組みなどが随所に描き込まれている。
これまでに何冊か鹿島氏の著作を読んでいるせいか、出てくるパリの描写が、あれ?これはどこかで読んだぞ!っと思わせるものが多く純粋に小説としての世界に浸れなかったのが少し残念。しかしながら、コマキ少年がパリの街で出会う人物はそれぞれにとても個性的で、その風貌や行動などを想像するのは楽しかった。
一番受けたのは、ペリーヌなる登場人物。そのまんま、アニメ「ペリーヌ物語」のペリーヌなのだ。確かに原作はフランス20世紀初頭の話なのだろうが、私にとっては、アニメのペリーヌ物語の印象しかない。小説の中のペリーヌはアニメのあの顔をして目の前に浮かんできました。
小説なのだけれど、エッセイのような不思議な一冊。
書 名 マリー・アントワネットの調香師
     ジャン・ルイ・ファージョンの秘められた生涯~
著 者 エリザベット・ド・フェドー 訳 田村 愛
出版社 原書房
出版年 2007年

 実在の宮廷御用達香水商ジャン・ルイ・ファージョンの生涯をたどる一冊。彼の香水を愛した人々、とりわけ、マリー・アントワネットと、その周囲を華やかに取り巻いていた人々の素顔が生き生きと描き出されている。調香師ファージョンは単に鼻が利き商売上手なだけの男ではなく、哲学を愛する父親の薫陶を受け、近代的な自我と人間と社会に対する理性的な目を持っていた。それが、おそらく後年、宮廷御用達香水商であったがために投獄されたにも関わらず、すんでのところで、ギロチンの餌食にならずにすんだのではないかと思う。
 著者は一人の調香師の生涯を丹念に追っていくことで、彼の顧客であった、デュ・バリー夫人やマリー・アントワネットの日常の生活風景をも鮮やかに描き切っている。彼と同じように、宮廷に出入りしていた、服飾商ローズ・ベルタンや結髪師レオナールなどの人物も、非常に生き生きと描かれている。
 著者が女性であり、歴史家であると同時に、香水に関わる仕事をしているせいもあるかも知れない。膨大な資料から拾い上げられたエピソードが、あたかもひとつの香水のように調和し、さわやかな余韻を感じさせる。巻末の資料も充実していて、18世紀に興味がある人にも、香水に興味がある人にも、お勧めできる一冊。
書 名 香水 -ある人殺しの物語ー 文春文庫
著 者 パトリック・ジュースキント 訳:池内 紀
出版社 文藝春秋
出版年 2003年

2007年3月公開されたトム・ティクヴァ監督の映画「パフューム」原作。18世紀パリの街に、類稀なる才能と不幸を持ち合わせて生まれた一人の男の一生を描いた小説である。読み始めて一気にこの小説の世界に引き込まれた。この小説の本当の主人公は目に見えぬ匂いである。男が求め止まぬ匂いの世界。その匂いの描写がとにかく素晴らしい!!久しぶりに興奮した。その結末に驚かされるが、醜悪でありながら、甘美で荘厳でありさえする。映画もDVDレンタルが開始される。ぜひ見てみたい。この小説をどのように映像化しているのだろう??

非常に淡々とした文体で、フランスっぽくないと思ったら、やっぱり著者はドイツ人でした。


書 名 排出する都市パリ-泥・ごみ・汚臭と疫病の時代-
著 者 アルフレッド・フランクリン 訳 高橋清徳
出版社 悠書館
出版年 2007年

 昼休みに駅ビルの書店をうろついていて見つけた一冊。どういう理由か、昔からこの手の本が大好きだ。背表紙の題名にひかれて手に取ったのが運のつき。表紙の絵にまず「おお~っと!」と目を奪われ、目次を見て購入決定!アマゾンに注文して、届くのが待ち遠しかったこと、この上なし。
 アルフレッド・フランクリンは19世紀の歴史研究者で、原著は彼の書いた「過去の私的生活」全27巻のうち、「衛生(Hygiène)ー街路の状態、下水、ごみ捨て場、便所、墓地ー」の巻である。副題のとおり、12世紀から18世紀にいたるパリの街の衛生状態について書かれている。
その凄まじさたるや、「嘘だろう?」と言いたくなるような記述が続く。
18世紀にいたってもなお、その衛生状態は現在からは考えられないほど酷い状態だったのだ。華麗なベルサイユ宮殿にはトイレが一箇所しかなく、国王夫妻専用だったそうだ。と言う事は、それ以外の人間は、穴あき椅子を使用していたということになる。もしくは、広大な庭の茂みで・・・。香水は強烈な臭気を消す為だったのか・・・。
 墓地の記述もかなりすごい。特に、イノサン墓地の当時の状況の記述の凄まじさたるや、気分が滅入るほどである。活字を脳内で映像に変換する癖があるので、結構きつい。イノサン墓地は1785年から翌86年にかけて掘り起こされ、発掘された骨は、現在観光スポットになっている「カタコンブ」に運ばれている。その移送の様子や費用など、興味深くもあるが、背筋がぞっとするものでもある。
 華やかに見える大都市の裏側にあった様々な問題は、今の都市が抱える問題と通じるところがたくさんあると思う。一方で、日本人の並外れた清潔志向と対比という点でも非常に興味深い。
 パリの街の真実を知ると、夢が壊れてしまう部分もあるが、そうした日常の上に歴史的事件が起こっていたのだと思うと、それはそれで、なかなか感慨深いものがあるのである。
書 名 ラヴォアジェ Century Books101
著 者 中川鶴太郎
出版社 清水書院
出版年 1991年


 「人と思想」シリーズの1冊。『世界の有名な大思想家の生涯とその思想を当時の社会的背景にふれながら立体的に解明した思想の入門書』と銘打たれた一般・学生向けのシリーズだけに、とてもわかりやすく、興味を持続しやすい構成で、最期まで楽しく読めた一冊。
 近代化学の創立者と言われるラヴォアジェだが、なぜそう呼ばれているのか恥ずかしながら知りませんでした。錬金術から近代的な化学へと完全に脱皮していくのがまさにラヴォアジェ達が活躍した18世紀後半の出来事であった事に、改めて驚かされます。僅か250年前には酸素という言葉さえなかったのです。更に、ラヴォアジェは単に科学者としてだけ生きたのではなく、フランスブルボン王朝末期のルイ16世の時代に高級官僚として、また、革命後にはメートル法制定に大きな役割を果たし、ギロチンによってその50年の生涯を閉じます。
 断頭台へと彼を追いやったその理由が、彼に豊かな財力をもたらし、高価な実験器具や試薬を潤沢に用意すること可能にさせ、まさに『化学革命』を実現させた、徴税請負人という職業を断罪されてのものでした。まさに現代の化学の発展の扉を大きく開いた彼が、アンシャンレジームの清算の犠牲者となったところに、歴史の光と影を見る思いでした。もしも、この本に学生時代に出会っていたら、もう少し化学の授業に身が入ったかもしれません。
書 名 侯爵夫人ポンパドゥール ヴェルサイユの無冠の女王
著 者 マーガレット・クロスランド 訳 廣田明子
出版社 原書房
出版年 2001年

ポンパドゥール侯爵夫人の波乱の一生を描いた、読み応えのある一冊。公的寵姫として20年間、ルイ15世に仕え、支え、そして、愛した、彼女の生活は壮絶ともいえるものだった。ヴェルサイユの華やかな暮らしの裏にある、野心、欲望、虚栄・・・。平民出身でありながら、誰よりも華やかに、美しく、ロココの女神として生きた彼女の人生は、小説よりも小説的ともいえるかもしれません。





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